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西原理恵子の人生画力対決

4月に藤子不二雄A先生が亡くなったときに思い出したこの作品。よく出演してくださったよなぁ。その他にもビッグネームが続々と西原の一方的挑戦を受けてくださっているけど、何せ最終巻が2014年発行。現在までに鬼籍に入られた先生もいらっしゃるので、けっこう貴重な企画モノだったなぁと思います。

あらすじ&感想

西原理恵子はかなり好きな方なんですが、下ネタがきつい時は本当にきつい(笑)。で、この本のレビューを書こうと思って久々に読み返したら、記憶にあるより下ネタオンパレードでびっくりしてしまった! こんなんだったっけ!

この企画は一応美大卒(武蔵野美術大学)の西原が日本全国の有名漫画家に、『お題の絵を、己の記憶と漫画人生のみで描き上げて勝負を挑む』というもの。トークショー形式でお客さんを入れて、お酒を飲みながら客前で描いて笑いを取る系のイベントをいつものルポ漫画にした連載なんですが、初回ゲスト「しりあがり寿」2回目ゲスト「みうらじゅん」という美大卒サブカル系漫画家が連続した時に(これは失敗企画になるんじゃないか…)という雰囲気が漂っていました。連載初回から実名出したり絵で煽ったりして、大物漫画家を挑発しまくって挑戦を挑んでいるのに…と、弱気なスタートだったのに、まさかの3人目ゲストが藤子不二雄A先生という!

その後はそうそうたる漫画家(特にすごいと思ったのは、ちばてつや、松本零士、さいとう・たかを、里中満智子、竹宮惠子、萩尾望都といった伝説級の巨匠)の出演が実現するのですが、容赦ない西原の攻撃(現場でもケンカを売り、描き上げたルポ漫画でもさらに自分もろとも下げまくる。これが西原の作風だし、徹底的にヒール役を全うしているだけ)に、勝負を引き受けてくれる漫画家がいなくなってしまい、途中ボブ・サップやらホリエモンと対決する始末。段々つまらなくなってしまったのは勿体なかった。
だって、対決を断っても誌面でディスられるって、どれだけ暴れまわってるの!って。小学館のパーティーで対決相手を狩りに行くあたりガチで怖いよねぇ(笑)ちなみにその場であだち充と高橋留美子には面と向かって断られています。

出演してくれて嬉しかったし生で画力対決見たかったのは安彦良和だなぁ。ガンダム大好きなので。浦沢直樹もさすが!だし、島本和彦も本人の暑苦しさを含めて見たかった! 河原和音とかはまさか出るとは思わなかったからすごくビックリした。
ゲストがビッグネームであればあるほど、主催のはずの西原がアウェー感いっぱいになるのも(信者レベルの熱心なファンで会場が満席になるため)笑えるポイントです。対決の合間に垣間見える漫画家の素顔が描かれていて、「こんな作品描いているのに作者はこんな感じなんだ!」という驚きもあります。

断られた漫画家や名前だけは挙がっていた中で出て欲しかったのは、一条ゆかり、井上雄彦、魔夜峰央、諫山創あたりかなぁ。西原なんて少女漫画読んでないと思っていたのに、普通に学生時代に色々読んでいるのがわかって面白かった(夢見る乙女特有の感想は出てこなかったけど)ので、巨匠以降の少女漫画家もたくさん呼んでほしかったけど、やっぱりこんな企画には参加しないよね。

だいたいの漫画家が、自分の作品や影響を受けた作家の絵は見事に描くのに、興味のないジャンルになると全く自信がないのが丸わかりの頼りない線でこそこそ描くのが面白いです。「青年誌・少年誌派」と「少女誌派」は全く相容れないんだなぁ。少女漫画家は汚いオッサンとメカは描かないし、少年誌組はキラキラな世界は「???見たことない、知らない」みたいだし。
お約束でよく出されたお題「ドラえもん」が意外にも下手くそな人が多く、びっくりしますよ。あんなに有名なのに?!って。ゴルゴ13、ガンダム、ヤマトもやたらお題に出されますが、本当に好きだった人しかキチンと描けないのがわかって微笑ましいとうか。西原はうろ覚えのまま練習もしないので、最初から最後まで下手なまま(笑)

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